暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
ホテルに戻ると、望愛はベットに眠っていた。
声をかけて起こそうかとも思ったが、せっかく眠ったのをわざわざ起こすもの気が引けてそのままにした。

「もう少し待っていればお母さん特製のスープが飲めたのにな」
うっすらとかいた額の汗を濡れたタオルで拭きながら、俺は話しかける。

「なぜだろう、お前のことが頭から離れないんだよ」

俺は、一条コンツェルンの後継者になるとこだけを切望しいて生きてきた。
若くして亡くなった父さんの無念を晴らし、じいさんに認めさせる方法はそれしかないと思っていた。だから、恋はしないと自分に課した。
なんて、本当は怖くて人を好きになることができなかっただけだ。
もし、父さんのようにある日突然死んでしまったら、残された家族に悲しみと絶望の日々が訪れる。
そんな思いを愛する人にさせたくはない。その一心で、俺は恋愛を避けてきた。
それが・・・
いっそ綾香さんのようなしたたかで貪欲は人なら、割り切ったドライな関係でいられたのかもしれない。
しかし目の前で眠っている坂本望愛は、人一倍人間同士のしがらみに弱くて、自分の保身よりも相手のことを考えてしまう人間。
それがわかっていて、俺は彼女を好きになってしまった。
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