暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「望愛さん香水を変えました?」
「え?」

隣に座った桃ちゃんに言われて、慌てて自分の体をクンクン。
もちろん変えた覚えはないけれど・・・

「副社長の臭いがしますね」
「ああ、えっと、さっきぶつかったからかな」
なんて誤魔化してみたけれど、逆に怪しまれた気がする。

「そうですか。気を付けてくださいね、病み上がりなんですから」
「うん、ありがとう。それより、桃ちゃんと創士さんは知り合いなの?」

さすがに仕事上での接点があるとは思わないから、ここに圭史さんがいるのが不思議でしょうがない。

「実は親同士が親しくて」
「へー、そうなんだ」

ってことは桃ちゃんもどこかのお嬢様ってことか。
どうりで高級ブランドの服を持っているわけだわ。

「ところで、創介も勇人もすごく忙しそうだけれど何かあった?」
運ばれてきたランチコースの前菜をつまみながら、圭史さんが桃ちゃんに聞いている。

「え、そうですか?いつも通りですけれど」
「そう、何かトラブルでもあったのかと思ったんだけれど」
「いいえ、私は聞いていませんね」
「ふーん。望愛ちゃんは何か知っている?」
「いいえ、私も何も」
知っていても、今は言えない。

「大体、副社長が忙しいのはいつものことだから、珍しくもないでしょ」
いつものように、桃ちゃんは創介さんのこととなると辛口になる。

「そうか、じゃあ俺の気のせいかな」
ハハハと笑った圭史さんに、私はなぜか引っかかるものを感じていた。
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