暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「お疲れ様です」
「ああ、お疲れ。変わりないか?」
夕方になり会議から帰って来た創介さんが開口一番聞いてきた。

「ええ、今のところどこからも何も言ってきません」
「そうじゃなくて体調の方だよ」
「ああ、ランチもおいしくいただいて絶好調です」
「高井桃と一緒だったのか?」
「高井さんと、圭史さんも一緒でした」

私だって、圭史さんがいたことは黙っておこうかと思った。
わざわざ言う必要もないかと考えたけれど、後から知れるよりはいいだろうと自分から口にした。
創介さんのことだから怒るのかなと思ってはいたけれど・・・

「何で圭史がいたんだ?」
「わかりませんが、高井さんとは以前からの知り合いのようでしたから偶然だったのかもしれません」
「ふーん」
やはり不満そうな顔。

「それはそうと、今回の件は圭史さんも知らないんですよね?」
ちょっと気になって、たずねてみた。

「ああそうだが、どうかしたのか?」
「別に何があったわけでもないんですが、なんとなく圭史さんは気が付いているんじゃないかなって気がして」
「圭史が?」
「ええ。忙しそうだけれど何かあったのかって聞かれたんです。ただそれだけなんですが、もしかして何か知っているのかもしれないなと思って」

私だって何の確信がある訳でもない。
ただ、龍ヶ崎夫人が何かしようとしているのを圭史さんが気づいたってことも、考えられないことではない。

「わかった俺の方でも調べてみる」
「お願いします」

その後の仕事は順調だったけれど、無くなった商品は出てこないまま一日が終わった。
さすがに溜まった仕事が残っていた私が残業しようとすると、創介さんに止められて定時の帰宅となってしまった。
< 144 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop