暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
ゆっくりと足を踏み入れたのは、静まり返った副社長室。

ソファーには険しい顔をした創介さんと口元から血を流した圭史さんが向かい合って座り、創介さんの後ろに課長が立っている。

「望愛も関係者の1人だから、話しておくべきだと思う」
だから部屋に入れたんだと創介さんが言う。

「何があったんですか?」
さすがに、聞かずにはいられなかった。

三人は学生時代からの親友のはず。
間違っても殴り合いの喧嘩をするような仲ではないし、これは友人同士の喧嘩には見えない。
この重たい空気から何かあったんだと、私は気が付いてしまった。

「ごめんね、望愛ちゃん」
真っ青な顔をして圭史さんがうなだれる。

「私は別に」
謝ってもらう覚えはない。

「望愛のことを軽々しく呼ぶな」
絞り出すような声で創士さんが言うと、圭史さんはそのまま黙ってしまった。

その後、今回の船荷紛失の犯人が圭史さんだったと課長から聞いた。
もちろん最初は信じられなかったけれど、事件の詳細を圭史さんにも聞き、私も信じるしかなくなった。
< 147 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop