暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「何で船荷を奪ったんだ」
重苦しく静まり返った室内に、創介さんの声が響く。

苦しそうなその表情がどれだけ傷ついているかを物語っているようで、私は創介さんを直視できなかった。

「創介がうらやましかったのかな」
「バカを言え。お前は俺にないものを全部持っているじゃないか」

同い年のいとこ同士。
両親を交通事故で失い、家庭の温かさを知らずに育った創介さんと、両親からの愛に包まれて育った圭史さん。
一見圭史さんの方が幸せに生きてきたように見えるけれど・・・

「勉強も、スポーツも、もちろんビジネスも俺は何一つ創介にはかなわない。ずっと、ずっと、劣等感を抱えて生きてきたんだ。そんな気持ちがお前にわかるか?」

それは創介さんに向けた言葉。
苦しそうな顔をした圭史さんが創介さんを見つめている。

「ふざけるな、優秀なのはお前の方だ。俺はじいさんに叱られてばかりだったのに、お前のことは褒めていたじゃないか。人当たりがよくて優しいお前はみんなの人気者で、俺は『かわいげのない子』だって言われ続けていたんだぞ」

年齢も同じで、背格好も似ている三人。
みんな素敵な男性に違いはないけれど、キャラクター的には三者三様。
まじめで落ち着いた雰囲気を持つ谷口課長は、どちらかと言うと頭脳派。
出来る策士には見えるけれど、王子様キャラではない。
一方創介さんは、きりっとした目元が印象的な二枚目。
本人に言うと怒るかもしれないけれど、いるだけで華がありパッと目を引く存在だ。
もう一人の圭史さんは、その端正な顔立ちが穏やかで大人な印象を与えている。
好みは分かれるけれど、創介さんと同様に目を引く王子様キャラであることに間違いはない。
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