暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「なあ、何で泣いているのかを教えてくれ」

本当に理由がわからないらしい創介さんは、頼むよと私の顔を覗き込む。

「創介さんが、秘書とは思っていないなんて言うから」
「だって、そうだろ。どこの世界に秘書を抱きしめたりキスしたりする上司がいるんだよ」
「それは・・・」
そうかもしれないけれど。

「じゃあ聞くけれど、望愛は俺のことをただの上司として見ていたのか?」
「上司は上司でしょ」
他にたとえようがない。

「上司となら抱き合うし、キスもするってこと?」
「そんなことはありません。それは創介さんのことが好きだからで」
「だろ?俺も一緒だよ。俺も望愛が好きだ。だから望愛のことは特別で、ただの秘書とは思っていない」

はじめて、創介さんに好きだと言ってもらった。
そのこと自体は飛び上がるくらいうれしい。
でも・・・

「桃ちゃんのことも好きですか?」
「はあ?」

二人の打ち解けた会話が今でも耳を離れない。
私のことを特別だと言ってくれるように。きっと桃ちゃんも特別な存在なんだろう。
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