暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「望愛が一緒だから大丈夫だとは思うけれど、あの二人が暴走しないようにしっかり見張っておいてくれよ」
「もー、大丈夫よ」

とは言ったものの、なぜか似た者同士の美愛と桃ちゃん。
気が強いのも、言い出したら聞かないのも、少しわがままなところまでが似ていて、時々トラブルを起こすこともある。

「一人でも大概手を焼くのに、二人そろうとパワー倍増だからな」
いつも二人に言い負かされている創介が、大げさに肩を落としてみせた。

「気を付けます。だから心配しないで」
「まあ望愛を信じるけれど、何かあればすぐに連絡するんだぞ」
「はい」

やかましく言うのも心配しているからこそ、そう思うから嫌ではない。
私のことも、美愛のことも、桃ちゃんのことも大切にしてくれる創介が私も大好きだ。

普段から酸素を携帯している美愛が外出するのはそれなりに準備もいる。
家の中では自分の足で歩いている美愛も体力の問題や転倒を考えて外では車いすを使うから、そのせいで入店できない店や行動に制限が出ることも多い。

「確か新しくできた店に行くんだって桃が言っていたが、大丈夫か?今日は土曜日だからかなり人が多いぞ」
「うん。私も桃ちゃんの一緒だから大丈夫だと思うわ。それに美愛が行きたがっている洋書の専門店が近くにあるのよ」
「へー、そうなのか。くれぐれも気をつけてな」
「はい」

大丈夫よと言わなければ、「俺も一緒に行こうか」と言い出してしまうだろう創介からは、以前のような冷たくて俺様な印象がなくなった。
私に限らず周囲に人に優しくなった気がするし、笑顔も増えた。
まあ、一条コンツェルンの総帥になって率いていく人間もものすごい数になるんだから当然かもしれないけれど、隼人さんに言わせれば「幸せが態度に出ている」のだそうだ。
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