暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「おはようございます」
今日もいつも通りの時間に出社してきた副社長を出迎える。

「ああ、おはよう」

定例の朝のあいさつ。
最近では返ってくる「おはよう」って声でその日の機嫌がわかるようにもなってきた。
どうやら今日は、あまりご機嫌麗しくない。

「今日の定例会議は11時だったな?」
「はい」
「じゃあ朝のうちに海外事業部から上がってきていた書類に目を通すからそろえておいてくれ」
「はい。でも・・・」
困ったぞ、課長が話に来るって言っていたのに・・・

「でも、なんだ?」
真っすぐに、副社長が私を見ている。

「朝のうちに企画部の轟部長がおいでになります」
「何しに?」
「詳細は聞いておりませんが・・・」
「隼人を呼べ」
「・・・はい」
あーあ、さっそく怒らせてしまった。

隼人とは秘書課長のこと。
普段仕事の場面では「谷口」と呼ぶ副社長も、二人の時や怒っている時には「隼人」と名前で呼ぶ。
今回はどう考えても後者だろうな。
とは言えこれ以上怒らせないためにも課長を呼ぶしかない。
しかたがないなと電話に手を掛けようとしたその時、

トントン。
「失礼します」

いつものように返事を待つこともなくドアが開き、課長と数人の男性たちが副社長室に入って来た。
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