暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「こちらとしても先方に抗議しましたし、担当者を変えて改めて打ち合わせを申し込んだのですが、『約束と違うことが多すぎるからキャンセルする』の一点張りでして・・・」
企画部長の困り顔。

ここまで聞くと、問題があるのはやはり女性歌手の方に思える。
キャンセルに伴う損失の話も気にはなるけれど、この企画自体これ以上進展する気がしない。

「話の内容は大筋で分かった。企画部としてこのイベントはこれ以上進められないと判断するなら仕方ないだろう。しかし、代替えの案を出してもらわないと困るし、そこに今回の損失を補えるだけの収益が見込めないでは話にならない」
「しかし、それは・・・」
企画部長の顔色が蒼白になった。

元々ホテルの一大イベントとして企画されたライブ。
規模も大きいし、その分の収益だってかなりの数字を見込んでいたはず。
だからこそ長い時間をかけて準備を進めてきたのだ。
それを急遽用意した企画案に変更し、中止したイベント分も含めて利益を出せなんて無茶が過ぎる。
企画部長でなくても青くなってしまう発言だ。

「今から準備してそこまでの数字を出せなんて、無理です」
それまで黙っていた企画課長が意を決したように口を開いた。

「無理でもやってもらうしかない。これは企画部が招いた結果なのだから」

「しかし・・・」
男性担当者が唸ったまま下を向いた。

彼は今、こうなったのは自分の責任だと感じているのだろう。
もしかしたら、自分が誘いを受けさえすればすべてがうまくいったと思っているのかもしれないな。かわいそうに。
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