暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「私はダメね。周りが全然見えてない」
さすがに落ち込んでデザートに向かう手が止まった。

「そんなことありませんよ。今では望愛さんがいないと副社長の機嫌が悪いって噂です」
「それは嘘よ」
「本当ですって。さすが会長が花嫁候補に推すだけのことはあるって、みんな言っています」
「そんなあ・・・え?」

今なんて言った?
私の耳が壊れてなかったら、『花嫁候補』って聞こえたけれど・・・

「やっぱり知りませんでしたか?」
口を開けたまま固まった私の反応に、桃ちゃんの申し訳なさそうな顔。

「知らない」
何も聞いてない。

「副社長も今年で三〇歳ですから、会長としては心配だったのだろうと思います。それで、知り合いに気立てのいいお嬢さんがいるからって望愛さんを副社長の秘書に付けたんです」
「そんな・・・」

でも待って、ということは副社長は最初から私をそういう目で見ていたってこと?
いや、それにしてはずいぶん冷たい態度だった。
そもそもあの副社長が、こんな話をすんなり受け入れたのが不思議。

「副社長としては、断ればお見合いの話が来るだろうし、どうせすぐに辞めるだろうと思ったんじゃないですか」

なるほど。
って、私の気持ちはまるで無視なわけね。

「もしかして、今日はそれを教えるために誘ってくれたの?」
「そうではないんですが、当事者である望愛さんだけが知らないのはフェアじゃない気がして」
「そう。教えてくれて、ありがとう」

桃ちゃん、いい子ね。
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