暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「今度建てる九州のホテルは今までとは違った滞在型のリゾートホテルなんです。立地の場所も離島ですし、その分の建設コストだってかかります。今回受注した地元企業はその点に強くてこちらが望む条件を出してきた。ただそれだけです」

あくまでもビジネスライクに説明する副社長の言うことは、素人の私が聞いていても真っ当に聞こえた。

「それならそうと初めから望む条件を言えばいいでしょ。そうすればうちだって同じものを用意できたわ」
「おばさん、それって何て言うか知っていますか?談合ですよ」
「何ですってっ」
怒り心頭の表情で、龍ヶ崎夫人が副社長を睨んでいる。

マズイな。
このままでは収まりそうな気がしない。
せめてどちらかが引いてくれればいいのだけれど・・・

「そうやって敵ばかり作っていると、いつか誰もついてこなくなるわよ」
「ご心配には及びません。必要な人の前ではちゃんと対応しますので」
「それはどういう意味?私にはその価値がないと言いたいの?」
「ご自由にご理解ください」
「ふざけないでっ」

龍ヶ崎夫人の声がひときわ大きくなり、近くにあったグラスに手が伸びるのが見えた。
そのグラスは副社長が置いていたもので、トマトジュースが半分ほど残っている。
私は反射的に飛び出していた。
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