暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る～花嫁候補のようですが、謹んでお断りします～
パシャッ。
真っ赤な液体が空を舞った。

「キャッ」

一瞬何が起きたか理解できなかったが、すぐに全身が冷たくなる。
どうやら私は、自分で用意したトマトジュースをかぶってしまったらしい。

ああ、もう最悪。
着ていた白いブラウスは真っ赤に染まり、顔も髪まで濡れてしまった。

「バカ、何をやっているんだ」
聞こえてきたのは副社長の焦った声。

「・・・すみません」
なぜだろう、反射的に謝ってしまう私がいる。

私は時々、後先考えずに行動することある。
頭より先に体が動くというか、無意識に行動に出るというか、今回もそんな感じだ。
もちろん、自分が飛び出してトマトジュースをかぶってしまったことに後悔はない。
あのままだったら副社長にかかってしまっただろうから。
そんなことになればもっと困ったと思う。でもなあ・・・

「おばさん、一体どういうつもりですか？これは暴力ですよ」
「暴力なんて大げさね。あなたの秘書が勝手に出てきたんじゃないの。それに、普段のあなたの言動が人の恨みをかってこうなったと思わないわけ？」
「思いません。僕は僕のやり方で一条を守っていきますから」
「それが生意気なのよ」
「おばさんっ」
副社長の怒鳴り声。

いつも強い言葉で周りを威嚇しがちな副社長だけれど、こんな風に大声で怒鳴ることは珍しい。
暴君で怒りん坊に見えて、本心を表に出さない。
だから、こんなに怒ったのところは初めて見た。
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