暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
さすが東京の電車は時間に正確で、予定通り駅に到着。
駅から人の波に乗って数分歩けば、目的地である一条プリンスホテルが見えてきた。

「うわ、スゴ」
この立派な建物に私が勤めるのは、やはり場違いな気がする。

ホテルの全容を目にしてその大きさに圧倒されてしまい、らしくもなく弱気になる。
でも、ここまで来たからには逃げだすことはできない。
口をきいてくださった重さんのためにも頑張らないとね。
私はもう一度気合を入れなおして、ホテルの正面玄関へと進んだ。


「おはようございます。私、坂本望愛と申しますが、」
「ああ、坂本さんですね」
フロントに向かって立ち「谷口さんはいらっしゃいますか」と尋ねるよりも早く、背中から男性の声がした。

「えっと・・・」

この声の主が谷口さんなのだろうと思うけれど、何者なのかがわからず言葉が続かない。
きっとこのホテルのスタッフだとは思う。でも、着ているのはビジネススーツでホテルの制服ではない。かといってどこか現場のスタッフって感じでもない。それに男性が現れた瞬間、フロントのスタッフが頭を下げたように見えた。
ってことは・・・

「お待ちしていました。どうぞ、行きましょう」
「は、はい」

色々と気になることはあるけれど今はついて行くしかなく、私は男性の数歩後ろを歩いてホテルの中へと入って行った。
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