暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「ただいま」

大きな紙袋をいくつも抱えて、私は自宅に帰ってきた。
副社長はタクシーで帰るようにって勧めてくれたけれど、貧乏性の私にはどうしてもできなくて電車にした。
おかげで腕はパンパン。

「すごい荷物ね」

荷物を下ろし玄関に座り込んだ私にかかった声。

「え?美愛―っ」

立ちあがった私はリビングの入口からこちらを見ている人影に向かって突進した。

「痛い、痛いよ望愛」
「うん、ごめん。でも、今日が退院だったの?」
「そうよ。望愛を驚かそうと黙っていたの」
「もうっ、美愛ったら」

私は自分よりも一回りほど小さな体を抱きしめた。
小さな頃から一緒に育ってきた双子の妹は、以前よりも細くなった気がする。
それにしても、この温もりを感じるのはいつぶりだろう。
一卵性双生児で、普通だったら瓜二つになるはずだった私たちは全く違う見た目をしている。
165センチの私に対して美愛は150センチギリギリ。
筋肉質の私と違ってやせこけた美愛はいつも年下に見られて、双子に見られたことはなかった。

「ほら、食事にするわよ」
母さんの声がかかり、私達はリビングに向かった。
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