暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
それなりににこやかな顔で、相手の言葉に耳を傾けながら穏やかに話をする創介副社長。
その立ち居振る舞いや雰囲気は、知らない人間が見れば王子様に見えるのかもしれないと初めて感じた。
普段からきつくて意地悪なところしか見ていないせいかもしれないけれど、こうして少し距離を置いて離れて見たからこその発見だった。
でも、私は副社長がこういう席を好きでないのを知っている。
無理して笑っているのもよくわかるからこそ、少しだけかわいそう。
お金持ちなんて何の苦労もないように見えるけれど、実際煩わしいことが多いのだなと副社長を見ていると実感する。
やっぱり平凡が一番だなと思いながら会場を見ていると、

「もしかして、望愛ちゃん?」
急に声がかけられた。

「えっと・・・」

私の目の前に立ったのは高そうなスーツを着た若い男性。
身長は副社長と同じくらいだから、185センチほどかな。
細身で、年齢もほぼ副社長と同じくらいに見える。
二人の違いを見つけるとすれば、その優しそうな表情。
とっても穏やかでにこやかな顔をしている。

「突然すみません。僕こういうものです」
差し出され名刺。

そこには『龍ヶ崎建設社長 龍ヶ崎圭史(りゅうがさきけいし)』と書かれていた。
龍ヶ崎建設と言えば、先日お目にかかった龍ヶ崎夫人の会社。
ってことは・・・

「坂本望愛ちゃんで間違いないかな?」
「ええ」
でも、この年になって望愛ちゃんと言われても・・・
え、待って、
私の頭の中で何かが繋がっていく。

「もしかして、圭史先輩ですか?」
「そうだよ」

嘘。こんなところで会えるなんて、信じられない。
私は思わず椅子から立ちあがっていた。
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