暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る～花嫁候補のようですが、謹んでお断りします～

「なるほど、子供の頃にね」
「ええ。小中と同じスイミングクラブの所属していたんです」
「ふーん」

面白おかしく話を盛ろうとする圭史先輩に代わり私が説明すると、副社長はなるほどとうなずいた。
重さんつながりがあるとはいえこの広い東京で偶然再会するなんて本当に奇遇で驚いたと話す私に、なぜか仏頂面の副社長。
おかしいなあ、さっきまでは愛想よく挨拶をして回っていたのに。

「そう言えば、先日は母が押し掛けたらしいな。すまなかった」
申し訳なさそうに圭史先輩が言う。

「別に、もういい。それに、お前が謝ることじゃないだろう」
「そう言ってもらうと助かる」

そうか、圭史先輩は龍ヶ崎夫人の息子。
副社長と龍ヶ崎夫人とはあまり友好的な関係ではないと課長が言っていたから圭史先輩とも険悪なのかと思ったけれど、二人は普通に話をしている。
じゃあ、副社長の不機嫌の原因は何だろう。
どちらかというと私に怒っているように見えるのだけれど・・・私何か気に障ることをしたかしら。

「今も望愛ちゃんに、創介に虐められたらうちにおいでて言っていたんだ」
「もう、圭史先輩やめてください」

先輩お酒が入っているのかな。随分ハイテンションで上機嫌な圭史先輩。
それに引き換え・・・

「いいんじゃないか」
俺は止めないぞと言いたそうな副社長に、私は少し寂しい気持ちになった。