暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
しばらく3人で話をしていたけれど、私がいることで益々不機嫌になっていく副社長を見かねてその場を離れた。
そこにいるだけですぐに声をかけられる二人は、私が離れて行ったことにも気づいていないのかもしれない。

私は少し離れた壁際に立ち、夢の世界を眺めていた。
ちょうど会場では新作のファッションショーが始まり、多くの人がランウェイの方に集まってきている。
綺麗なモデルさんたちが最新のファッションでステージ上を歩くたびに歓声が上がり、会場自体も熱量が増した気がする。

こんな場所は仕事でもなければ一生来ることがなかっただろうな。
せめてこの雰囲気だけでも目に焼き付けておこうと、会場全体を見回す。
パーティーの開始からだいぶ時間が経ったからだろうか、中には足元のおぼつかない人もいるし、大きな声で盛り上がっている人もいる。
お酒の席はどこも変わらないのね。なんて思って見ていると、

ドンッ。
数人の集団と酔っぱらった男性がぶつかった音。
そのはずみで男性の足がもつれ倒れ込む。

ガシャンッ。
男性がぶつかったのは会場に置かれていた大きな氷のオブジェ。
ぶつかった衝撃で氷はぐらつき、

「キャーッ」
反対側にいた女性に向かって傾いていく。

マズイ、倒れる。
私は無意識のうちに体が動いていた。
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