暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る～花嫁候補のようですが、謹んでお断りします～

「沖縄ではツアーガイドをしていたんだよね？」
「ええ。とは言っても離島めぐりを中心としたネイチャーガイドのような仕事でしたけれど」

間違ってもきれいな服を着て、オシャレに街中でショッピングや観光をするようなガイドではない。
実際沖縄にいる間に履いた靴はスニーカーとサンダルだけ。パンプスもハイヒールも一切出番がなくて気が付いたらゴミになっていた。今日だって大学時代の就活できたスーツと靴を引っ張り出したくらいだから。

「お客さんも色んな人がいるでしょ？」
なぜだろう、谷口課長は興味津々で話を振ってくる。

「ええ、みんな旅先だと思うと本性が出るみたいで、ハイテンションの人もいればわがままばかり言う人もいます」

トラブルだってたくさんあったし、困ったお客さんにもいっぱい当たったけれど、基本的にみんな楽しみに来ているってところは共通だから、苦にはならなかった。
最終的に「楽しかった」と帰ってもらえば疲れなんて吹っ飛んでしまう。

「そういう意味では、うちの仕事とも共通点があるよね」
「え、ええ」

お客様に日常にはない喜びを与える仕事ととらえれば、確かにホテルの仕事と共通するところがあるのかもしれない。