暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
平石会長が用意してくださったのはホテルのスイートルーム。
きっと気を使ってくださったってことだろう思う。
広い部屋に置かれた大きなソファーに腰を下ろした俺は隼人にメッセージを入れ、念のために足の診察をホームドクターに依頼した。

それにしても、無茶なことをする子だ。
後先を考えないというか、行動が先に出るというか、先日の龍ヶ崎の叔母さんの時もそうだったが、驚かされることが多すぎる。

ブブブ。
隼人からの着信。

「もしもし」
『おい、坂本さんは大丈夫なのか?』

もしもしも、名乗ることもなく焦った声で始まった電話は、いつもの隼人らしくもない。
まあそれだけ慌てているってことだろうが。

「今はシャワー中だ」
『そうか。それで、着替えだけでいいのか?』
「そのことだが、少し足を痛めたようだから後で整形外科に連れて行こうと思っているんだ。先生には俺が電話を入れておくから、坂本の家に遅くなることの連絡だけ頼む」
『わかった、電話を入れておく。着替えもすぐに届けるから』
「悪いな、助かる」

やはりこんな時頼りになるのは隼人だ。
じゃあ頼んだぞと電話を切って、俺もネクタイを緩めた。
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