暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「おまたせ」
「悪いな、ありがとう」

大きな袋を両手に下げて入って来た隼人が、部屋の中を見回している。

「坂本さんはシャワーか?」
「ああ、向こうで着替えを待っている」
「そうか」
何か言いたそうに隼人が俺を見る。

「どうかしたのか?」
「いや、坂本さんの家には遅くなるけれど送って行きますと連絡しておいた」
「そうか、助かった」
きっと心配をしているだろうから、早く連れて帰ってやろう。

「平石コンツェルンの平石会長からも直々に電話をもらったぞ」
「うん」
自分の系列ホテルでのことだから、気にしてくださったのだろう。

「それと、圭史からも電話があった」
「圭史から?」
「ああ」

そう言えば会場で一緒だったし、彼女とも知り合いだと言っていたから気になったのかもしれない。

「坂本さんは今どこだとしつこいから、創介と一緒だと答えたがよかったか?」
「ああ、問題ない」

俺と隼人と圭史は大学時代からの友人。
もちろん圭史はいとことして子供の頃から何度も顔を合わせてきたが、親しく話すようになったのは大学に入ってからだった。
気が合った俺たちはいつも一緒に遊んでいたし、就職も半ば強引に隼人を一条コンツェルンに誘った。
俺にとって友人と呼べる存在は二人以外にいない。

「何で圭史が坂本さんを知っているんだ?」
「子供の頃に知り合いだったらしい」
「へー、そうだったのか」

一応納得はしたものの、隼人はまだ何か言いたそうな顔。

「悪い、彼女に着替えを渡したいんだが?」
追い払うようだが、彼女のバスローブ姿を隼人に見せる義理はない。

「ああ、俺は帰るよ。会社の車を待たせておくから使ってくれ。後は頼んだぞ」
「わかった」

隼人は荷物を置くと部屋を出て言った。
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