暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「すみません、ありがとうございました」
着替えを済ませ出てきた彼女。

「サイズは大丈夫?」
「ええ」

隼人が持ってきたのはスカートとブラウスと薄手のジャケット。
オフィスカジュアルにも見える服装はいかにも彼女が好みそうなものに見える。
さすが隼人だな。

「着て来た服はもうダメだろうから、ホテルで処分してもらうか?」
「ええ、そうですね」

ん?
なぜだろう、元気がない。

「どうかしたのか?」
「いえ、今日の服は借り物だったんです。ブランドのパーティーなのでそのブランドの服がいいだろうと教えてもらって、さすがに私は持っていなかったので、借りて来たんです」

なるほど、借り物をダメにしてしまって困っているってことか。

「どこの店で借りたんだ?」
「お店ではなくて、秘書課の高井さんに借りたんですが・・・」
「高井って、高井桃?」
「ええ」

なるほどね、あいつが貸したのか。
でもそれなら話は早い。

「高井さんには俺が弁償しておく」
「それはダメです」
「なんで?仕事で出席したパーティーの衣装なら経費にだってなるし、経理が通らないなら俺が払うから心配いらない」
「でも・・・」
「気になるから菓子の一つでも渡して『副社長が利子を付けて弁償するって言っていた』と言えばいい」
「そんなあ」

最後までブツブツと言っていたが、ボロボロの服を見ればもう返すことができないのは納得したようで、彼女は渋々頷いた。
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