暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
問診をして、診察をして、念のために採血とレントゲンも撮り、検査結果がそろうまでに待つこと30分。
待合室で俺たちはただ座っていた。
思えば、こうしていることが苦痛ではない女性は彼女が初めてかもしれない。
一緒に仕事をするようになって3か月以上たつから慣れたのかもしれないが、きっと気を使わない存在なのだと思う。

「帰りが遅くなるって、家にも電話をしてくださったんですね」
スマホを見ながら、複雑な表情。

どうやら家から連絡があったらしいが、あまりうれしそうな顔じゃない。

「遅くなれば心配するだろうと思って、隼人に連絡を頼んだんだ」
「そうですか、ありがとうございます」
「もしかして、迷惑だったか?」
「いえ。でも、氷の下敷きになったことは言わないでください」
「わかった」

随分気負を使うんだなと思ったが、それも彼女らしいのかなと俺は素直に返事をした。

「わがままを言ってすみません。でも、私のことでまで心配をかけたくないんです」
「そうか」
優しい子だな。でも、何か事情がありそうだ。
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