暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「お待たせしました。どうぞ」
検査の結果がそろい、俺たちは院長先生に呼ばれて診察室に入った。

「レントゲンも撮ってみましたが骨には異常なさそうだから、診断としては右足首の捻挫ですね」
「そうですか」
それを聞いて彼女もホッとした顔。

「でも捻挫をなめたらいけませんよ。癖になることだってあるし、用心しないと治りが遅くなることもありますからね」
「はい」
「それに、以前左足をケガをしたことがあるんじゃないですか?」

え?
俺の方が反応して、彼女を振り返った。

「子供の頃、左のふくらはぎを切ったことがあります」
「そうですか、きっと普段から無意識に左足をかばう癖があるんだと思います。だから、余計に右足に負担がかかるはずです」

左足のふくらはぎ。
そう言われて彼女の足元を見ると、うっすらと残る傷跡。
でも待てよ、この傷には見覚えが・・・

「創介君、どうかしたのかい?」
「いえ」

なぜだろう、何か記憶が絡まっていて、もう少しで繋がるのだが・・・

「一週間後に予約をとるので、それまでヒールは禁止。なるべく歩かないようにしてテーピングをして過ごしてください」
「一週間後ですか?」
彼女の困った顔。

「難しいですか?」
「ええ、平日は仕事が・・・」

「大丈夫です。来させます」
断ろうとしている彼女の代わり俺が答えてしまった。
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