暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「わざわざ送っていただいてありがとうございます」

診察を終えて病院を出ると、俺達は再び車に乗り込んだ。

「気にするな」
仕事中にしたケガだ、俺にだって責任はある。

「明日からは会社の車を回すからそれで通勤するといい。そうすれば満員電車に乗って通勤することもないだろう」
「大丈夫です。出勤時間を早めてなるべく座って通勤するようにしますので」
「ダメだ。先生も歩かない方がいいって言っていただろう」
「でも・・・」

彼女のことだからこういう反応になるだろうとは思っていたが、ここだけは俺も譲れない。
そもそもこいつは、放っておくと何をするかわかったものじゃない。

「それが嫌なら俺が迎えに来ようか?」
「いえ、それは困ります」
はっきりきっぱりと返ってきた返事が、癪に障る。

彼女の住まいがあるのは、都心から少し離れた郊外の街。
もちろん田舎ってわけではないが、都心の喧騒は感じない。
こんな場所で坂本望愛は育ったんだなと思いながら、俺は車窓を眺めていた。

「その先のコンビニで止めてください」
「はい」

彼女が運転手に直接声をかけ、車はコンビニの広い駐車場に止まった。
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