暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る～花嫁候補のようですが、謹んでお断りします～

「坂本さん悪いね、何か甘い物でも持って行ってやって」

コーヒーを用意しようと給湯室にいた私に、課長が声をかける。
甘い物ってことは・・・・

「怒らせました？」
「ああ。龍ヶ崎建設の現場で小さな事故があって工事が遅れると連絡があったんだ。そのせいでうちへの納期が遅れそうでね」
「そうですか」

大きな現場では少なからず事故も起きる。
もちろん事故なんて起きてはいけないけれど、人間のやることに絶対はないから。

「すまないが、機嫌が悪いと思う」

今、一条プリンスホテルで創介副社長にはっきりとものが言えるのは谷口課長しかいない。
どれだけ言いにくいことでも伝えないといけないことはある訳で、その役目はどうしても課長に回ってくる。そのことは副社長だってちゃんとわかっているはず。
友人故に売り言葉に買い言葉で強い表現になる時もあるけれど、そこにはちゃんと信頼関係がある。

「了解しました」
大丈夫ですよと、私は笑顔を返した。