暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「すまない」
申し訳なさそう言う副社長が、痛々しい。

「私は、大丈夫です」

創介副社長が圭史先輩のことを心配してだからこそ怒っているのがわかるから、怖いとは思わない。
ただ、苦しそうな副社長を見ていることが辛い。

「建設業界で労災事故を起こせば取引先の信用を失い仕事自体が来なくなる。そのことは会社の経営にとって大きな痛手だ。しかし、それ以前に事故は従業員の体と命に直結している。だから、絶対にあってはいけないんだ」
「・・・副社長」

多くの人を使う立場になれば、当然背負う責任だって重くなる。
それが経営者ってものなのだろうと思う。
私には想像もできないけれど、きっと孤独なものなのだろうな。

「圭史先輩に、後で連絡を入れてみます」

先日のパーティー後圭史先輩からは何度かメールをもらっていたから、連絡をしてみよう。
忙しくて電話には出られないかもしれないけれど、メールならいいだろう。

「その必要はない」
「え?」
副社長も心配なのだろうと思って言ったのに、予想外の反応。

「俺が電話を入れておくから、何もするんじゃない」
「・・・わかりました」

おかしいなあ、良かれと思って言ったのに。
だいぶ慣れたとはいえ、やはり副社長の考えていることが私にはわからない。
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