暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「そこまで言うなら言わせてもらいますが、ご自分だって随分公私混同しているじゃないですか?」
「どういう意味だよ」
それまで黙っていた課長が意を決したように口を開くと、当然副社長も言い返す。

「ここ半月ほど、副社長の機嫌が悪くて困っていると各部署の部長たちからの声が上がってきています。副社長自身も気づいていますよね?」
「それは・・・」

半月前。
それはちょうど、副社長との約束をキャンセルして圭史さんと食事に行ったことで言い合いになった頃。
確かにその頃から口数も減り、イライラしている。

「坂本さんも、今までだったら再確認してから提出していた書類をそのまま出しているよね?」
「ああ、はい」

そう言われれば、機嫌の悪い副社長に声をかけ辛くて必要最低限の確認しかしていない。
もちろん副社長から直接渡されたものだが、今までだったら一応目を通して気になる点については「ここはこれでいいですか?」と聞いていた。

「2人が喧嘩をしようと、仲良くしていようと、何も言うつもりはありません。ただし、仕事はしてください。業務に影響が出るようでは困ります」

先ほどとは形勢逆転。
私と副社長の方を交互に見ながら話す課長。

「すまない、気を付ける」
「すみませんでした」
私も副社長も自覚があるだけに、今度は謝るしかない。

仕事や副社長に慣れたせいもあって、大丈夫だろうと油断していたのは事実。
もう少し緊張感をもって仕事に向かうべきだった。

「わかっていただければいいんです。私としても襟を正して業務に当たりたいと思いますので、よろしくお願いします」
「ああ」

少しだけ言い負けたような格好になった副社長は渋い表情だったけれど、課長は笑顔で出て行った。
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