イケメン双子の総長さまは孤独な姫を甘い愛で包み込む。

もうこれは明日職員室に持っていこう。


私は生徒手帳をそっとカバンの奥底にしまった。



***


バイトが終わり、自分のアパートへ帰る。ドアを開けると部屋は真っ暗でとても冷え込んでいる。


それもそうだ。


今は10月。あんなに暑かった夏も面影を無くすように消え去った。暑さと入れ替わるように寒い冬が始まろうとしていた。



「……さむっ」



誰もいない部屋の中はもちろん暖房などついているはずもなく冷え込んでいる。


ぶるっと身震いしたあと私はカバンを放り投げ、中学の頃に着ていたジャージに着替える。


築30年程のおんぼろアパート。部屋にはいくつもの穴が空いていて風がびゅうびゅうと吹き込んでくる。


今年の冬はどうやって乗り切ろう。


エアコンはなくて、ストーブはあるけど本当にたまにしかつけない。燃料費を安くしたくて毎日我慢の日々だ。


夏は暑くて冬は寒い。


このアパートに住み始めて1年が経過しようとしていた。
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