薙野清香の【平安・現世】回顧録
 さて、その日のうちに崇臣の指導が終わったかというと。


『おまえは、本当にそのフォントが一番良いと思っているのか』


 清香はスマホに表示された文字を睨みつけながら、ポキッと首を鳴らした。


(ホント、面倒くさいったらありゃしない)


 崇臣は凝り性だ。普通なら流せるところをとことん追求するもので、今日は全く話が進まなかった。


(東條さまには適当に嘘吐いて、指導が終わったことにすりゃあ良いのに)


 ご丁寧に、指導が終わらなかったからと連絡先まで交換させられた。今後、できあがったページを随時データ送信するよう、指示されている。


『取り合えずこれで書き進めて、フォントは後で調整するから良いの!』


 眉間に皺を寄せながら、清香はそう崇臣にメールを返した。ついつい憎たらしい崇臣の表情が目に浮かんで、盛大なため息が漏れた。


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