薙野清香の【平安・現世】回顧録
「それで?お姉ちゃんの方はどんな感じ?た・か・お・みさんと!」
振り返ると、いつの間にか芹香が清香の後ろにいて、スマートフォンを覗き込みながら、ニヤニヤと笑っていた。明らかに揶揄うような物言いと表情。本来ならば腹が立っても良さそうな場面だが、清香はトキメキすら覚えてしまう。
(良い!芹香だったら何しても許せちゃう!可愛い!)
清香は唇をワナワナと震わせながら、目を細めた。こうして揶揄いの対象となる自分すらも誇らしく思えるほどなので、もう末期状態である。
「それがね、あれやこれやと崇臣の注文が多くて、ちっとも編集作業が進まないの。だから致し方なく連絡先を交換したんだけど、これが中々面倒――」
「……やったーーーー‼」
芹香は唐突に声を上げると、クルクルと嬉しそうに回った。思わぬ反応に、清香はパチクリと目を見開いた。
「そっ……そんなに喜ぶこと!?」
「喜ぶことよ!お姉ちゃんが!あのお姉ちゃんが‼男の人と連絡先を交換するなんて!……ようやくお姉ちゃんも自分の幸せを考えてくれるようになったんだ……って。そう思うと、私、嬉しくて」
そう言って笑う芹香の目には、薄っすらと涙が溜まっている。清香はあまりのことに、静かに息を呑んだ。
振り返ると、いつの間にか芹香が清香の後ろにいて、スマートフォンを覗き込みながら、ニヤニヤと笑っていた。明らかに揶揄うような物言いと表情。本来ならば腹が立っても良さそうな場面だが、清香はトキメキすら覚えてしまう。
(良い!芹香だったら何しても許せちゃう!可愛い!)
清香は唇をワナワナと震わせながら、目を細めた。こうして揶揄いの対象となる自分すらも誇らしく思えるほどなので、もう末期状態である。
「それがね、あれやこれやと崇臣の注文が多くて、ちっとも編集作業が進まないの。だから致し方なく連絡先を交換したんだけど、これが中々面倒――」
「……やったーーーー‼」
芹香は唐突に声を上げると、クルクルと嬉しそうに回った。思わぬ反応に、清香はパチクリと目を見開いた。
「そっ……そんなに喜ぶこと!?」
「喜ぶことよ!お姉ちゃんが!あのお姉ちゃんが‼男の人と連絡先を交換するなんて!……ようやくお姉ちゃんも自分の幸せを考えてくれるようになったんだ……って。そう思うと、私、嬉しくて」
そう言って笑う芹香の目には、薄っすらと涙が溜まっている。清香はあまりのことに、静かに息を呑んだ。