薙野清香の【平安・現世】回顧録
(今後はもう少し、人と関わっていかなきゃ……かな)


 芹香の悲しむ顔はこれ以上見たくない。そう強く願いながら、目を瞑る。
 けれど気持ちとは裏腹に、清香の目には、何かを諦めたように笑う、芹香と同じ顔をした、尊き人の表情が浮かんだ。


(絶対、あの時と同じ轍は踏まないって、決めてるんだから)


 決意を新たに、清香は芹香の手を握り返すと、満面の笑みを浮かべた。


「分かった……。芹香がそんな風に言うんだもん。私、もう少し、他人とちゃんと向き合ってみる」

「お姉ちゃん……!」


 そう言って芹香が嬉しそうに笑う。清香はそれが堪らなく嬉しかった。


(あぁ!芹香が喜んでくれるなら、私、なんでもできそうっ……!)


 どんな無茶なお願いをされても叶えてあげたい。そんなことを考えながら、清香は目を細めた。


「そうと決まったら!早速、崇臣さんとデートの約束を取り付けようじゃない!」

「……へ?」


 けれど芹香から放たれたのは、思わぬ言葉だった。満面の笑みを浮かべたまま、清香は大きく首を傾げる。


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