薙野清香の【平安・現世】回顧録
「おまえはそれで良いのか?」

「良いも悪いも何もないわ。芹香が付いてきてって言うなら、私はそれに従うだけ」


 本当のところ、崇臣は四人で出掛けることをどう思っているのだろう。そうは思うが似た者同士、崇臣からは清香と同じ返答しかないに違いない。


「崇臣もそうでしょう?」


 崇臣はすぐにコクリと頷いた。予想通りの返答に、清香の口からため息が漏れた。


「それで?編集の方はうまくいってるのか?」


 モニターを見つめながら、崇臣が尋ねる。


「うぅ……」


 清香はそっと唇を尖らせた。分かりやすくいえば、絶賛行き詰っている所である。


「なにが上手くいかないんだ?」

「写真の位置がさ……絶妙にズレて行くのよ。思った位置に来ないし、文字を潰しちゃったりして。何度も調整しているんだけど、うまくいかなくて」

「見せて見ろ」


 崇臣はそう言って、パソコンの前に座った。すると、これまで思うようにいかなかったことが、瞬く間に動き始める。


「画像はここで設定を変えれば自由に動かせる。あと、やり方はいろいろあるが、文章はテキストボックスに入力した方が編集がしやすい」

「そっか。…………ありがと」


 清香はほんのりと頬を染めながら、ペコリと頭を下げた。今回ばかりは素直にならざるを得ない。そうは思えど、妙に騒めく心臓のせいで、真っすぐに崇臣を見ることはできない。

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