砂嵐のいたずら
飛行機事故の恐怖は日に日に薄れていったけれど、
あいつの存在は私の中で、少しずつ色濃く、大きくなっていった。
彼の唇が触れた額に手を当てる。
思い出しただけで、顔が火照り、ドキドキが増す。
彼にとったら、私なんて嫌悪の対象であるアジア人でしかない…
そう自分に言い聞かせ、あきらめようとしているのに…
「はぁーっ…」
まだ休職期限が10日あるけど、そろそろ日本に戻って早めに職場復帰しようかな…
そう思ったその時、
『マナ、あなたにお客様よ。』
おばあちゃんが意味ありげな笑いを浮かべながら私を呼びに来た。
誰なのだろう?
リビングのドアを開け、来客者の姿を見た私は、その場に立ち尽くした。