砂嵐のいたずら
私の声で周囲はざわつき、こちらに視線が向けられているのを肌で感じ取ることが出来た。
彼は私のクイーンズイングリッシュに一瞬、驚きを見せたけれど、
『お前以外にいったい誰がいるというのだ。』
地の底から響きわたるような声で言った。
「悪いけど私、日本人じゃないわ。確かに祖父母には日本人も中国人もいる。でも、国籍で言ったら、オーストリアとカナダの二重国籍よ。」
私はバッグからパスポートを出すと、彼に見せた。
彼は一瞬言葉に詰まっていたけれど、
『いくらオーストリア国籍でも、お前は高貴なヨーロッパ人の血をアジア人の血で汚した愚かな人間から生まれた愚か者だ!』