ファンタジック・バレンタイン
「で、そのチョコなんだけど・・・。」



「うん。」



「ネコの形のチョコレートが欲しいの。」



「ネコの形?」



「うん。できればネコが笑ってるチョコがいい。」



「うーん。ネコかあ。」



私は即座にとある有名なキャラクターを思い出していた。



片耳に赤いリボンを付けているあのネコだ。



でもあのネコは口がない。



笑っている顔もみたことがない。



「とりあえず、ショッピングセンターへ行ってみようか?」



私がそう提案すると、女の子がうん!と嬉しそうに頷いた。



スマホの時刻表示を見ると、もう16時を少し過ぎていた。



冬の夕方はすぐに空が真っ暗になってしまう。



遅くならないうちにナコちゃんを家に帰さないといけないから、急がなくては。



「じゃあ駅前のショッピングセンターへ行こ!」



私は車の通りが多い歩道を、ナコちゃんの手を握って並んで歩いた。



ナコちゃんの手はとても冷たかった。
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