ファンタジック・バレンタイン
私とナコちゃんは駅を大きく迂回し、商店街の中にある葡萄色をした小さなケーキ屋さんに入った。



ここは小さいながらも、旬の果物を使ったケーキや可愛いメレンゲが乗せられたムースなど、オリジナルな洋菓子が評判の店だ。



重いガラスの扉を押し開けて、ナコちゃんとふたりで横に長くて狭い店内へ入った。



ショーケースの中にはチーズケーキやフルーツで飾られたプリン、モンブランなど美味しそうな洋菓子がいくつも並べられていた。



「あ!ナコちゃん、これはどうかな?!」



そのショーケースの中には、ユーモラスな顔をしたネコを模した丸いドーナツケーキがひとつだけ売れ残っていた。



表面はホワイトチョコレートでコーティングされていて、ニコニコな目にお髭が3本、そして口元は可愛らしく笑っている。



「うん!これがいい!これにする!」



私は店員さんにそのチョコレートドーナツケーキを買いたい旨を言い、白くて小さな箱に詰めてもらった。
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