ファンタジック・バレンタイン
「あのね・・・私、ナコちゃんに頼まれて、これを渡して欲しいって。」



私がチョコレートドーナツケーキの入った白い箱を掲げると同時に、高梨君が私の両肩を掴んだ。



「ナコに会ったのか?!」



「う、うん。さっきまで一緒にいたんだけど。」



「米山。遅い時間に申し訳ないけど、俺の家に寄ってくれないか?ナコの話を詳しく聞きたい。」



「うん。時間は大丈夫。」



私は高梨君に促されて、その黒くて広い門をくぐった。



玄関口でローファーを脱ぎ揃えて、高梨君の家の中へお邪魔した。



廊下の奥に広いリビングがあり、大きなテレビの前にこげ茶色のソファが置かれていた。



「ソファに座ってて。今、お茶を入れる。」



「お、お構いなく。」



初めて入る高梨君の家。



ここで高梨君は毎日、日常を過ごしているんだ。



そう思うと胸が高鳴った。



待っている間に、私はママに「少し帰りが遅くなる」とラインでメッセージを打っておいた。

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