ファンタジック・バレンタイン
しばらくすると高梨君は、四角いお盆に湯飲み茶わんを載せて、キッチンから私の座るソファにやって来た。



そして温かい緑茶の入った湯飲み茶わんを私の前に置いた。



「外、寒かっただろ?温まって。」



「ありがとう。」



いきなり現れた訪問者なのに、私を気遣ってくれる。



やっぱり高梨君は優しい。



私の冷えた手は湯飲み茶わんの熱でじんわりと温まった。



緑茶を口に含むと、喉の奥が熱くなった。



私の横に高梨君が座る。



その距離の近さに、私の身体は緊張で固まった。



高梨君は私が湯飲み茶わんから口を離したタイミングで話しかけてきた。



高梨君の指先が震えている。


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