ファンタジック・バレンタイン
高梨君はひとしきり泣いたあと、赤い目をこすりながら私に謝った。



「悪い・・・泣いたりして。」



「ううん。」



「米山も気付いていると思うけど、ナコはもうこの世にはいない。」



私は小さく頷いた。



ナコちゃんが私の前から霧のようにいなくなった瞬間に、きっと私は本能で理解していた。



ナコちゃんは違う世界の人なのだということを。



「ナコ・・・高梨奈子は俺の妹。生きていれば今年小学校3年生だった。」



「そう・・・なんだ。」



私もナコちゃんが生きているときに出会いたかった。

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