ファンタジック・バレンタイン
高梨君は決して目立つタイプではないけれど、男友達は多く誰とでもきさくに会話をして、男子の中では人気者だった。



ただ女子とはあまり話さず不愛想にしているので、女子の中では人気がある方ではないと勝手に思っていた。



私はあくまでもさりげなく、登下校のときに「おはよう。」と挨拶したり、図書室で「私もその本、読んだことあるよ。」とひと言だけ声を掛けたりした。



その積極性は自分でも驚くほどで、高梨君も私の言葉に短いけれど「おう」と答えてくれた。



だから高梨君の魅力を、その誠実さを、素敵なところを一番理解しているのは私だけ・・・と高をくくっていた。



でもそれは大きな間違いだった。



高梨君に好意を寄せている女子は私だけではなかったのだ。

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