ファンタジック・バレンタイン
私はバレンタインデーに自分の気持ちを、高梨君に伝えようと決心した。



私達はもう高校三年生。



春がくれば学校を卒業し、それぞれの道へ旅立っていく。



このまま高梨君と会えなくなってしまうのは悲しすぎる。



せめて自分の気持ちを伝えて、ダメだったらきっぱり諦めよう、そう思った。



そしてバレンタインデー当日、私は昇降口で高梨君をまちぶせし、高梨君と一緒に帰る道すがらチョコレートを渡そうと目論んでいた。



ドキドキしながら高梨君がスニーカーを履き、いつもの黒いリュックを背負って下校するのを待った。



しかし待てど暮らせど、高梨君はやって来ない。



しびれを切らした私は再び校舎の中へ戻り、高梨君の姿を探しに隣のクラスをそっと覗いた。



するとそこには高梨君と、学年一の美少女である柳麗奈さんが、ふたりっきりで見つめ合っている姿があった。



柳さんが高梨君にピンク色の箱を手渡し、高梨君もそれを嬉しそうに受け取っていた。



私はすぐにその場所からダッシュで逃げ出し、それでもまっすぐ家に帰りたくなくて、通学路途中にあった児童公園でしょんぼりと肩を落として現在に至るのであった。

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