まさか推しの作家が幼馴染だったなんて ~ハイスぺオタク男子の甘い溺愛~

◆第四話 翔太のストーカー


〇翔太の家の前の通り(電柱の影)・休日(昼)


麗華「これがエロサングラス先生のお住まいですのね…!」

電柱の陰から翔太の家を監視する美少女。
ちょうど下校途中の翔太が美羽とぎこちない雰囲気で帰って行くところだった。

通行人「おい、あの子ってアイドルの麗華じゃない?」

通行人達に見られていることにも気付かない假屋崎麗華(かりやざき れいか)。
彼女は現役アイドルで熱烈なエロサングラスのファンである。
これまで全てのイベントに顔を出して、エロサングラスのツイッターもフォロワーしている。そして前回のイベントで翔太達の後を追ってこの家までたどり着いたストーカーだった。

麗華「あの女…! 前回のイベントで先生と一緒にいたわね。焼肉屋さんでも先生とキスしてたわ…!」

ギリリと唇を噛む。

麗華「私の方が絶対にエロサングラス先生とお似合いですのに!」

そこで執事兼マネージャーが麗華の背後から青い顔で出てくる。

茂雄(セバスチャン)「麗華様、ストーカーはまずいですよ」
麗華「だまらっしゃい!セバスチャン!」
茂雄(セバスチャン)「いや、私の名前は鈴木茂雄…」
麗華「それより私の転校手続きをしえちょうだい」
茂雄(セバスチャン)「え?どこに?」
麗華「当然、エロサングラス先生と同じ高校よ! 先生が麗華と同い年だったのよ!? これはもう運命としか思えないわ」

茂雄(セバスチャン)「旦那様に怒られる…」

一人で燃え上がっている麗華に茂雄(セバスチャン)がアワアワしている。


〇学校・平日(昼)


対する美羽は、気まずくて翔太と顔を合わせられない。

美羽(アシスタントのバイトは電話ごしになんとかこなしていてるけど…)

顔を合わせるとキスをしたことを思い出して真っ赤になってしまうのだ。

美羽(あれから告白されて付き合うことになったけど…恥ずかしくて翔太の顔をまともに見れないよ〜!)

昨日は何とか一緒に下校できたけど、ほとんど会話もなく逃げるように家の前で別れてしまった。

翔太「…美羽ちゃん? 大丈夫?」
美羽(しまった!また翔太のことを考えて上の空に…)
美羽「何でもないの! 次は体育で着替えあるから先に行くね!」

お昼ご飯のお弁当も口に掻き込み、早々に教室を出る。
罪悪感を感じつつも、恥ずかしくてつい翔太を避けてしまっていた。
それを不服そうに見ている翔太。

クラスメイト「葉加瀬と柴って付き合ってんの? 俺、狙ってたのに〜」
クラスメイト2「なんであんなオタクと…」

周囲から見ると、キモオタクの翔太と美少女優踏生である美羽のカップリングは異質に見えた。
それを廊下の陰から見た麗華は笑う。

麗華「なーんだ、付け入る隙がありますのね! 皆、エロサングラス先生の美貌に気付いていない愚か者達ですわ」
麗華「これは略奪するしかありませんわー!」


〇学校(屋上へ続く階段)・平日(夕方)


放課後、麗華に屋上に続く階段に呼び出される翔太。時を同じく美羽も呼びつけられていた。

美羽「誰からの手紙…?」

不審に思いつつ美羽が階段にたどりつくと、そこでは翔太に抱きつく転校生の美少女の姿が。
美羽は動揺して逃げてしまう。
麗華は翔太の体を触りながら艶っぽく笑う。

麗華「私、エロサングラス先生のファンなんですの。付き合ってくださいまし」

その場を見てショックを受けた美羽は走り去る。

翔太「美羽!」

逃げて行く美羽に気付いた翔太は追いかけようとするが、麗華に腕を掴まれて阻まれる。

翔太「…悪いけどそんな気はない」
麗華「何よ、そんなにあの子がいいんですの!? ただのガサツ女じゃない! 麗華の方が可愛いのに!」

麗華を睨みつける翔太。

「それ以上、美羽のことを馬鹿にするなら許さない。美羽は誰より女性らしくて可愛いんだ」

その冷たい言葉に麗華は怖気付いたような顔をするが、何かを思いついたような顔をする。

麗華(私は欲しい男を諦めたことないですもの。ここで引いてなるものですか…!)

麗華「…学校ではエロサングラス先生の正体を隠してますのね? BLを書いてるのを知られたくないからでしょう?」

硬直する翔太。
麗華は不敵に笑う。

麗華「図星ですわね? もし麗華が暴露したら、どうなりますかしら? 皆に黙っていてほしかったら…」
翔太「…言いたければ好きにすれば良い。名誉が傷つこうと、好きな女に誤解される方が嫌だから」

そう吐き捨てて翔太は階段を降りようとする。

麗華「ちょっ、ちょっと…!」
翔太「欲しい女は美羽だけだ。自己保身のために美羽以外の女と付き合ったりしない。それなら、もう同人活動もやめる」

翔太がハッキリと振られて、麗華はその場で崩れ落ちて泣き始めた。

「…先生の新刊が読めないなんて…もう生きていませんわ」


〇校舎外・平日(夕方)


早足で帰ろうとしていた美羽を、翔太が引き止める。

美羽「離して!」
翔太「ご、誤解なんだ! 彼女に呼びつけられて告白されただけだ。でも断った。…俺の心には美羽しかいないから」
美羽「翔太…」

ドキリとする美羽。
二人がじっとお互いを見つめ合った時──。

生徒「飛び降りだ!」

その声につられて上を見ると、四階の窓から麗華が決死の表情でダイブしようとしていた。

麗華「エロサングラス先生の新刊が読めない人生なんて…」
美羽「假屋崎さん!」

美羽は青くなって叫んだ。そして周囲を見回し、テニス部員がネットを設置しようと手に持っているのを見つける。

美羽「貸して! 翔太!」

そう言って美羽はネットを手にして、翔太に目配せする。
美羽の意図に気付いた翔太はうなずき、ネットを一方を手に取った。
飛び降りた麗華を美羽と翔太がネットでキャッチする。
ぽかんとする麗華。

美羽「假屋崎さん、大丈夫!?」
麗華「ど…どうして助けたんですの!私はライバルなのに…」
美羽「え…だって死なれたら寝覚めが悪いし。目の前で自殺しようとしている人がいたら止めるのは当たり前でしょ」

その美羽の言葉に一瞬固まった後、泣きじゃくる麗華。

麗華「だって、私振られちゃいましたし。先生に嫌われちゃいました! もう先生の新刊も読めません…! 同じカイユウファンの皆様に申し訳なくて…私のせいで」

美羽(ああ…この子、私と同じなんだ)

もちろん振られたショックもあるだろうが、翔太に同人活動をやめさせてしまったことへ責任を感じたのだろう。
美羽ももし自分のせいで推し作家が筆を折ったら飛び降りたくなる。

翔太「…さっきはああ言ったけと、同人活動はやめるつもりはないよ。漫画書くの好きだし」

その翔太の言葉に顔を輝かせる麗華。

翔太「でも、きみの想いには応えられない。ごめん」

その言葉に、悄然とうなずく麗華。

美羽(良かった…)

安堵する美羽。

美羽(あれ?今ホッとしたのは假屋崎さんが助かったから? それとも翔太が彼女を振ったから?)

自分の気持ちに困惑する美羽。



〇美羽の家(玄関)・平日(朝)


登校しようとした美羽の家に麗華が訪ねてきた。
驚いている美羽に、麗華は赤い顔にで拗ねたように言う。

麗華「…エロサングラス先生に聞きましたわ。あなたが先生のアシスタントだって」
美羽「そ、そうだけど」
麗華「それに…私のことを誰よりも先に助けてくれようとしたと聞きましたわ…。そ、それで、お礼を申し上げたくて!」

ぽかんとする美羽に、照れたように顔を赤らめている麗華。つい笑ってしまった美羽に、麗華が怒る。

麗華「なんで笑うんですの!?」
美羽(もしかして仲良くなれそうかも?)

美羽は同担拒否というわけではない。同じ推しの仲間がいるなら楽しそうだ。

美羽「ねぇ、麗華って呼んでもいい?」
麗華「だっ、だめに決まってますわ!」

顔を真っ赤にして怒る麗華に美羽は笑った。

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