別冊・ダブルブルー
「連絡すれば、良かったね。ごめん、ね」


頭の上から降ってくるのは、いつもと全く変わらない、青さんのおだやかな声、で。


感情のままに、八つ当たりしてしまった自分が情けない。


ひとりきりの帰り道。


冷たく吹き付けてくる、春風に耐えられなくて。


体をぎゅっと縮めて、足元に力を入れた。


落ちていた視線を前に向けたら、寄り添って歩くカップルが嫌でも目に入ってしまう。


どんなに冷たい風が吹いていたって、いっしょに歩ければあたたかい。


…ここに、今。


青さんは、いない。



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