鬼上司は秘密の許嫁?!溺愛されるなんて聞いてません
だからこそ私も余計に何とかしたくて。
だけど新人で経験の低い私では、なかなか力になれなくて心苦しい。

「これ、頼まれた補充品です。あと、ポスターカラーと明後日発売の新商品と販促用のポスターです。こっちは奥に置いておきますね」

補充用の箱はその場で道上さんへ渡し、大きな容器に入ったポスターカラーの注文は数もあって重たいので、そのまま台車で運ぶことにする。

「ありがとう。じゃぁ、お願いね。あっ!」

そこへ着信が来たようで、道上さんはポケットへ入れていたスマホを取り出した。

さて、私はこの荷物を運ぶとするか―

「えっ、熱?大丈夫なの?」

その言葉に思わず私は足を止めて振り返った。
どうやら従業員の誰かが熱出てしまったらしい。
夏から秋、天気もコロコロ変わって体調崩しやすい時期だ。

私も弱い方だからな…熱、ほんと辛いよね。

「熱、高いんですか?お休みですか?」

通話が終わったタイミングで訊いてみる。

「うん、そうみたい。今日は休んで貰うことにしたから、他の人に来て貰えないか連絡入れてみるわ」

そう言って道上さんが再びスマホを耳に当てたところで、私は台車を再び奥へ進めた。
誰か来てくれるといいけど―と思いながら荷物を下ろしていると、在庫置き場に道上さんがヌッと現れた。

「どうでしたか?誰か、」

「卯月さん…助けてくれないかな?」

え?

悲壮感漂う顔ですがり付かれてしまった…。
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