鬼上司は秘密の許嫁?!溺愛されるなんて聞いてません
それから「いらっしゃいませ!」と塞いでいた通路を譲った。
けれど、何故か相手は動かず私をジッと上から見下ろしてくるだけ。

えーっ、と…お店、入らないのかな?

そう思いながら首を傾げれば、相手が突然口を開いた。

「お前か」

え?今「お前か」って言った?

ボソッと言われてよく聞こえなかったけど、確かにそう聞こえた。
聞き間違いではないと思う。
でも私のうっかり聞き間違えというのも有り得る。

一応後ろを見たけれど、やっぱり私しか居ない。
居るとしても遠巻きにこの人を見ているお客さんだけだ。
いや、道上さんもコッチ見てる。

助けてください!

情けない表情で助けを求めるけれど全く私のことは眼中にない様で、この人にキャーって感じだ。
イケメンの力は恐ろしい。

そんなイケメンはというと、腕を組み顎に手を当てて戸惑う私を見下ろしてきた。

「何も知らない様だな」

は?何も知らなそうって、初対面で失礼な!
何を知らないっていうの?
接客だったら、普段はもっと上手くできるもん。
ううっ、それにしても本当に気まずいんですけど。

じっくり見られる事に加えて、そのオーラと眼光に気圧されてしまう。

あ~っ、耐えられない!!
お客さんだけど、この人きっと案内は要らないよね。

「では、ごゆっくりと~」

退散、退散。

居心地が悪くなった私がコソコソその場を離れようとした時だった。
< 17 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop