鬼上司は秘密の許嫁?!溺愛されるなんて聞いてません
「おい、待て」

「!!?」

数歩もいかない内に、艶のある魅惑的な声で呼び止められた。

おまけに離れた距離をまた詰められてしまい、せっかく開いた距離がまた近くなってアワアワしてしまう。

恋愛経験皆無な人間だから、男の人との距離が近くなっただけでオタオタしてしまうのは許してほしい。

私が慌てて二歩下がると、相手は少しムッとした様だった。
パーソナルスペースってやつ知らないんだろうか。

それにしても私、何かやらかしたかな?
でも、この人のこと全く記憶に無いし…。
忘れっぽい私でも、さすがにこんなに目立つ人なら絶対に覚えてるはず。
それなのに記憶にないなら初対面だと思うんだけど。

ここは潔く訊いてみるか…。
もしも知ってる人だったら謝ろう、そうしよう。

意を決して私は目の前のイケメンの顔を見上げた。

うっ、眩しい!!
イケメンオーラ凄すぎる!

そんなはずないのに、ピカピカのスポットライトを当てられているかの様に相手が輝いて見える。
私は益々アワアワして身動きが取れなくなってしまった。

「お前はここの店員だろう?百面相したままボーッと突っ立って客の顔を不躾に見て失礼だろう」

突然の辛辣な言葉づかいに(怖っ!)と思ったと同時に(ごもっともです!)とも思った。

「すすすっ、すみません!えっと、あのっ、何かお探しでしょうか?よろしければ私がご案内致します」
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