鬼上司は秘密の許嫁?!溺愛されるなんて聞いてません
どもりつつ心臓バクバクな中、何とか接客モードに切り替えて相手を見上げる。

ダメだ。この顔を見ると平常心が飛んでいっちゃう。

私は一生懸命、相手の目を見ないようにしたけれど、無駄な足掻きだった。
顔のどのパーツも整ってて改めてお客さんのイケメン具合に驚かされるだけになる。

こんなイケメン間近で見たことないもん。
免疫ないから平常心とか無理すぎる。

おまけにこの人、なんか怖いし!!

どちらかというと怖いが先に立ち、笑顔の接客も口元がヒクヒクしてしまう。

「顔ひきつってるぞ」

だったらあなたこそ、その怖い顔を笑顔にしてオーラも抑えて欲しいです!
こんな風になってるのは、あなたのせいなんですから―なんて言えるはずもなく、スナギツネみたいになってしまった。

「その顔もやめろ」

ぐっ!!うぬぬっ…

ふうっと、溜め息をつかれ何も言えなくて心の中で唸り声が出てしまった。

いや、待て。
接客業なのに笑顔が出来ない私がいけないんだ。
お客様を案内し、文房具について提案したり相談するのが私の勤め。
それなのに今の私はどうだ、美祐。
ちょーっと、怖いお客さんだからといって態度を変える様では販売員失格ではなかろうか。

それに今までもクレーマーが居なかった事は無い。
何度も難しいお客さんに対応している。
それを思い出して初心に帰るんだ美祐!
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