鬼上司は秘密の許嫁?!溺愛されるなんて聞いてません
ズラリと並ぶシャープペンシル、ボールペンの他にいざという時に使える万年筆タイプのペンを紹介する。

「デザインもいいんですけど、書き心地もバツグンで、特に万年筆タイプは用が無くても書きたくなっちゃうくらいの―」

「万年筆タイプの書き心地が良いのは分かった。だが、テスターが無いようだが?」

不機嫌そうな圧を感じる口調で話を遮られてしまい慌ててしまう。

「すみません!テスターはご用意してないんです」

「なぜ?」

私が答えるとイケメン客は眉間に皺を寄せ冷静な声で短く返してきた。

なぜって…。

それは少し値段が高い商品なのに、書き心地の良さから必要以上に使われて直ぐにインクが無くなるから。
無くなったら今度は売り物を勝手にテスター扱いする人も居る。
それに、洗練されたワンランク上に位置付けされたオシャレなペンなのに、買わない人に限ってラクガキが多いらしい。
「あいうえお」程度ならいいけれど最近は―という話を聞いている。

これは昔からの悩みどころ─とはいえ、それをお客さんに言うわけにもいかず。

「申し訳ございません」

私は頭を下げた。

確かに書き心地は確かめたい。
それは分かる。
私がお客さんなら同じ事を思うもんね。
だけどこうしてお店の立場になると、色々と難しいという事が会社に勤めはじめて嫌という程理解出来たのだ。
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