鬼上司は秘密の許嫁?!溺愛されるなんて聞いてません
この存続の危機がある店の売り上げを倍に?
そんなこと可能なのかな。

「分かったな?」

そんな私の考えが読まれたのか、部長がじっと見つめ念押ししてきた。
綺麗な意思の強い瞳に吸い込まれそうになる。

この目に見つめられながら言われたら首を横になど、きっと誰も振れない。
任せても間違いない、大丈夫だと不思議な気持ちになる。

「「はいっ!!」」

「よし」

私と道上さんが大きく返事すると、部長は鷹揚に頷いた。

「さっそく取り掛かる。道上さん、データ出して」

「はっ、はいっ!!」

端末のあるレジカウンターへ向かう道上さんの後へ続こうとした部長に私は慌てて声を掛けた。

「ぶっ、部長!」

「何だ」

「私は何をしたらいいでしょうか?!」

ヤル気を漲《みなぎ》らせ目を爛々とされる私を部長は遥か上から見下ろして言った。

「検品と品出しだ」

そしてクルリと背中を向けて数歩進むと僅かに振り向き「それと商品棚の整頓な」と言い残して行ってしまった。

それから部長は、店舗の端末で売り上げや在庫確認、その他の諸々へ目を通したり本社へ連絡したりの作業で裏に籠っていた。
私はというと取り敢えず部長の指示に従って検品して品出し、それから商品棚を整理したりの作業を黙々とやっていた。

寂しい…。
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