鬼上司は秘密の許嫁?!溺愛されるなんて聞いてません
イケメンなのに不機嫌顔で見下ろされるこの迫力はハンパない。

「いえ、聞こえてます。聞こえてますけど…」

聞こえているけれど、なにゆえ部長とふたりでご飯を食べに行かなくちゃならないのか?
今日初めて会ったこんな怖い上司とふたりきりで食事なんて、食べるどころか緊張して喉を通らなさそう。

グウッ…

あわわっ!

突然鳴った音に大慌てでお腹を押さえたけれど、それで鳴らないなら苦労はしない。
しつこくグゥーと鳴るお腹の音が恥ずかしくて真っ赤になって逃げ出そうとした私の肩を部長の大きな手が掴んできた。

「おい、どこへ行く?」

「いえっ、ちょっと…」

「腹が減ってるんだろう。早く行くぞ」

そう有無を言わさない口調で歩き出したした部長の背中を見る。

この人とこれからご飯?
会って間もないイケメンだけど、しかめっ面の怖い上司と一緒にご飯?

「何してる?早く着いて来い」

―絶対楽しくない!!



というわけで、私は西院部長の後に着いてモール内にあるイタリアンのお店にやって来た。
いつもお昼は混むお店も、この時間ともなればさすがに空いていて直ぐに席へと案内された。

結局、部長の誘いを断れなかった私は、お腹の音を止める為に必死で腹筋に力を入れて、案内してくれた店員さんがこの場を去るのを待っているところだ。
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